コラム防災

国土地理院の地図に載る災害伝承碑、川崎市には1基しかない——横浜市も1基という意外な話

2026年7月19日 | データ: 国土地理院 自然災害伝承碑(2026年6月25日版・全国2,451基)

まちに残る石碑には、昔の災害の記憶が刻まれています。国土地理院は2019年から、こうした石碑を「自然災害伝承碑」として地図記号にし、市区町村からの申請に基づいて地理院地図に掲載しています(文化財のような国の登録・指定制度ではありません)。掲載数は全国2,451基(2026年6月25日現在)。では、川崎市には何基あると思いますか。答えは1基です。

川崎1基、横浜1基。神奈川の政令市あわせて4基

川崎市内で地理院地図に掲載されている唯一の碑は、川崎区渡田の成就院にある「殉職者之碑」。関東大震災(1923年)で日本鋼管の従業員43名が亡くなったことを伝える碑です。少ないと思いきや、実は隣も同じでした。

自治体人口規模登録数
川崎市約155万人1基
横浜市約377万人1基
相模原市約73万人2基
厚木市約22万人14基
小田原市約19万人11基
箱根町約1万人10基

神奈川県の掲載101基のうち、横浜・川崎・相模原の政令市3市はあわせて4基だけ。一方、県央の厚木市や県西部の小田原市・箱根町には、関東大震災などを伝える碑が多く掲載されています。ただし掲載数は過去の被害の大きさだけでなく、碑の現存状況や自治体による調査・申請の進み方にも左右されます。

全国で一番多いのは岩手県の163基

都道府県別のトップは岩手県163基。次いで長野110基・兵庫103基・高知103基・広島102基(いずれも2026年6月25日現在)。津波・地震・土砂災害を繰り返し経験してきた土地では、「石に刻んで次の世代へ渡す」文化が根づいています。数字を並べると、伝承碑の掲載数は災害の多さそのものではなく、「碑を残し、調べ、申請するという営みの積み重ね」を表していることが見えてきます。

碑が少ない=災害がなかった、ではない

ここが大事なところです。川崎は関東大震災で工業地帯を中心に大きな被害を受けました。また1974年には、多摩川を挟んだ対岸の東京都狛江市で堤防が決壊し、家屋19棟が流失——川崎側にとっても多摩川水害の危険を身近に示した災害です。2019年の台風19号でも市内で浸水が起きています。災害はあった。地図への掲載が進んでいないだけです。掲載申請は市区町村が行う仕組みのため、地域の寺や辻に「まだ掲載されていない碑」が眠っている可能性は十分あります。

夏休み、碑を探しに歩いてみませんか

かわさき災害の記憶マップでは、川崎市内の1基と多摩川対岸の碑(狛江の「多摩川決壊の碑」、大田区羽田の供養塔など)をめぐる歩いて学ぶ2コースを用意しました。1974〜78年の空中写真といまの浸水想定を見比べられるので、お子さんの自由研究にも向きます。そして散歩の途中で古い石碑を見つけたら、刻まれた文字を読んでみてください。過去の洪水・地震・土砂災害の被害や教訓を伝える碑であれば、所在地の市区町村の防災・文化財担当部署などに情報提供することが、地理院地図への掲載につながる可能性があります。掲載申請を行うのは市区町村ですが、まちの記憶を見つけるきっかけは、市民の一歩から生まれます。

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出典と注意

出典: 国土地理院「自然災害伝承碑」データ(2026年6月25日版)を全国集計。人口は各市の概数(2025年前後の推計)。
注意: 登録数は今後増える可能性があります。本記事は市の公式情報ではありません。
災害の記憶マップで碑をめぐる